スポルテッドトップのフレンチオケージョナルテーブル
家具のお話

スポルテッドトップのフレンチオケージョナルテーブル

「使い込まれた風合い」とか「ぬくもり」といった言葉はアンティーク家具の魅力を伝える時によく使う常套句ですが、今、読んでいる小説に「古いもの」に関する素敵な描写があったので紹介しますね。

「かつて私は友人たちに(中略)歴史を感じさせるものを持っているか尋ねたことがある。三千年前の親指の跡が残っている古代の壺、とひとりが言う。アンティークの鍵、と別のひとりが言う。クレイパイプ第二次世界大戦期のダンス靴野原で拾ったローマ時代のコイン古本に挟まっていた昔のバスの切符。どの人も、これらの小さな品々が引き起こす感覚は妙に親密だという点で一致した。それを取り上げて手に触れることで、それを手にしていた別のだれかが、知らない昔のだれかのことが身近に感じられる。その人たちのことは何ひとつ知らない、でもそこにだれかがいると感じる、と友人のひとりが言う。自分とその人とを隔てる年月が消えてしまうような、自分がなんだかその人になるような気がするの。友人たちがそんな小さなかけがえのない品々を手にするとき(中略)、歴史がその場で消滅する。自分ととうの昔に死んだその人との間にある果てしない隔たりが、忘れられる。自分(中略)はその人たちと同じように世界を見ているのではないかと思わずにはいられなくなる。」
(太字は原文のまま。「オはオオタカのオ」ヘレン・マクドナルドより)

「親密」で「身近」、なるほど、アンティークの魅力を端的に伝える的確なワードですね。アンティーク家具の背景にある歴史やその時の社会情勢を系統立てて勉強するだけでは出会うことのできない、とても新鮮な言葉です。


この本は父を失った女性が鷹匠になるノンフィクションなのですが、ただのノンフィクションと括れない奥深さがあります。
というのも、随所に数世紀も前の鷹匠に関する文献が挿入され、まるでパラレルワールドのように二つの時間が言ったり来たりするのです。
機会があればぜひ手に取ってみてください。イギリスの田園風景の描写も見事です!

前置きが長くなってしまいましたが、今回紹介するのは、スポルテッドトップのフレンチオケージョナルテーブル。
天板の表面にある筋状の模様は、樹木の亀裂から雨水が染み込むことによって細菌が繁殖してできたもの。
長い長い年月が刻んだ摩訶不思議な造形を目にすると、確かに「歴史がその場で消滅する」ように思えてしまいます!