道具のお話#1
お手入れ・メンテナンス

道具のお話#1

無題22 今回は趣向を変えて木工で使う道具の話をします。 みなさんが木工道具、と聞いて真っ先に思い浮かべるのは、かんなやのみ、さしがねやノコギリではないでしょうか。 どれも家具の修理にかかせない木工道具の花形ですが、もしも、一番思い入れのある木工道具は、と質問されたら、 僕は真っ先に玄翁、と答えます。 家具を組み立てる時はもちろん、釘を打ったり、かんな刃の出し入れをしたり、のみを叩いたり、と、使う頻度が 一番多いのが、一般的に金槌、とか、トンカチと呼ばれる、シンプル極まりないこの道具。 バイオリンにとっての弓、とでもいえばいいのかな。手に届くところにないと仕事がはじまらない大事な道具なの です(弓がないとバイオリンの音が鳴らないように!)。 無題33 木工道具を揃える際に最初に手に入れるのも玄翁(玄翁がないとカンナものみも仕込めません)。 基本的に玄翁は購入する時に柄が付いていないので、自分の手の大きさや腕の長さに合わせて、自分で仕込みます (=柄を挿げる、と言います)。 くびれやヒツ穴に入る角度、など柄の寸法は各箇所に正確な寸法があるので原寸図を作成。かんなやのみを使って 樫の丸棒から削り出していきます。 ただ、これが簡単なようでいてかなりの難関! 実際に玄翁の頭に柄を挿げる時は、ヒツ穴に入る部分をガスバーナーで焦がないようにあぶりながら、極限まで乾 燥させます。そして、すげた後に楔を打つのはご法度なので、入らないときは何度も何度も削り直してぴったりの サイズに仕上げていきます。 ここで手抜きをしてちゃんと挿げないと柄が乾燥した時に玄翁の頭が飛んでしまうので「家具職人の腕前は(乾燥 している)冬場の玄翁をみればわかる」と言われるほど! (ご安心ください、僕の玄翁は20年間、抜けたことはありません!) 無題11 僕が使っているのは名工・長谷川幸三郎の80匁。もうすぐ引退するから買えなくなる、と聞いて無理して一緒 に120匁も買ったのですが、まだ挿げていません。 もっとも単純な形態・機能の木工道具だからこそ奥が深い玄翁。 忘れかけた初心を取り戻すために、年明け早々に挿げようと思います、ちょうど冬だし!