アーコールスティックバックチェア
家具のお話

アーコールスティックバックチェア

アーコールModel391スティックバックチェアの一番の魅力といえば、正面から見ると座面の奥に消え入るように見える3本のスピンドル。そして、後ろから見るとその3本のスピンドルが、後ろ脚を連結しているつなぎ部分に収まっている、その佇まい。この秀逸なデザインには、前後はもちろん、上から見ても、横から見ても唸らされます。
外国製のものとは思えない小ぶりなサイズ感も、繊細なデザインをより一層、引き立てています。

まだ3Dを再現できるソフトがなかった時代の、それこそハンドライティングで何度も画いては消して、を繰り返していた時代に生み出された斬新なデザイン。
かといってけっして奇抜、というわけではありません。脈々と続くヨーロッパの家具デザインの歴史を踏襲した、使い手に安心感を与える温もりがあります。

その「温もり」はModel391が100%木部でできていることと無縁ではないでしょう。異素材を使うことが流行だった当時において、アーコールModel391は脚や背もたれの接合部も木製のくさびを用いており、金属ビス類は一切使用していません。目に見えないところではありますが、こういったディテールにもその「温もり」を感じさせる秘密が隠されているのではないでしょうか。

トラディション(伝統)を重んじつつも、トレンド(流行)を要所要所に散りばめて、独自のキャラクターを体現したアーコールチェア。
その温かみとバランス感覚は、空間やインテリア、ひいては時代も選びません。

今回ご紹介するアーコールModel391スティックバックチェアは、経年劣化のためディスプレイ用になりますが、アーコールがリスペクトしてきた伝統と、独特のセンスを活かした先見性の融合を、存分に感じ取っていただけると思います。